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医・科学委員会コラム:得失点バランスによるプレー評価②


前回に引き続き、スポーツ医・科学委員会委員の玉城将氏のコラムです。「打球番号」によってプレーを区別し、評価する方法をまとめました。前コラムで紹介した方法の応用で、さらに細かくプレーを評価します。

(日本卓球協会スポーツ医・科学委員会委員長 吉田和人)


第13回 「得点と失点のバランスに基づくプレーの評価②」

日本卓球協会スポーツ医・科学委員会委員
玉城将(名桜大学人間健康学部)

前コラムでは「得点打率」、「失点打率」そして「効果率」によって、得点と失点のバランスが分析できることを紹介しました。その事例として3球目の得点打率、失点打率、効果率を取り上げましたが、「他の打球番号(=●球目)注1ではどうなのか?」というのも気になるところです。

ロンドンオリンピックの男子選手による試合を対象にそれぞれの打球番号の得点打率、失点打率、効果率を計算した結果を図1に示します。多くの試合を平均化した結果ですので特定の戦術と結び付けることはできませんが、このデータからは、現代卓球では何球目で得点しやすく、何球目で失点しやすいのかを読み取ることができます。例えば、効果率が最も高いのはサービスです。他の打球番号と比べて得点打率は低いのですが、それ以上に失点打率が低いためです(サービスミスはとても少ないですよね)。また、1~3球目は得点打率が失点打率より大きく効果率がプラスとなり、4球目以降は得点打率が失点打率より小さく効果率がマイナスとなるのも特徴です。

自身のデータをとってみて、このグラフと比較すると、「レシーブの得点打率は高いけれど、失点打率がさらに高いので、効果率がマイナスになってしまっている。リスクが高いレシーブを少し減らしてみよう」、あるいは「3球目での得点打率はもっと高くできるはずだ。積極的な3球目攻撃を増やそう注2」など、技術・戦術課題がみえてくることでしょう。


図1:打球番号毎の得点打率、失点打率、効果率

しかしながら、実際に自身の試合を対象にすべての打球番号について、得点と失点のバランスを分析するのは大変なことです。そこで、「何球目で得点したか」と「誰がサーバーだったか」の2項目だけを入力すれば、図1のようなグラフを作成してくれるWebページを作成しました(https://ttanalysis.bitbucket.io/)。自分自身のパフォーマンスを振り返るのに役立つデータが得られるかもしれません。まずは1試合だけでも計算してみてください。


注1:本コラムではサービスを1、レシーブを2と数える番号を打球番号と呼ぶこととします。3球目の打球番号は「3」です。

注2:相手にレシーブから攻められることが、3球目の得点打率が低い原因の場合もあります。得点打率は、レシーブで相手に強打された場合や3球目攻撃ができなかった場合を含めて計算されるためです。実際のプレーと関連付けて解釈する必要がある点に注意してください。