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医・科学委員会コラム:何球目から「ラリー戦」?


前回に引き続き、スポーツ医・科学委員会委員の玉城将氏のコラムです。「ラリー戦」が何球目から始まるかを解析した結果をまとめました。「サービスの影響」に着目し、「ラリー戦」を考えます。

(日本卓球協会スポーツ医・科学委員会委員長 吉田和人)


第14回 「何球目から「ラリー戦」?」

日本卓球協会スポーツ医・科学委員会委員
玉城将(名桜大学人間健康学部)

卓球では、打ち出されたサービスによって、その後のラリー展開は多様です。サーバーは自身が得点しやすい展開になるように様々なコース、回転、スピードになるよう操作するので、サーバーが優位となることが多いようです注1。一方で、ラリーがある程度続くとサービスの影響は小さくなり、どちらが優位とも言えない「ラリー戦」と呼ばれる局面になります。何球目くらいまでサービスの影響があるのでしょうか?実は、前コラムで紹介した打球番号毎の得点打率、失点打率、効果率には、何球目までサービスの影響が持続しているかがはっきりと示されています(図1)。


図1:打球番号毎の得点打率、失点打率、効果率

サービスの影響が十分に小さくなると、打球番号に関わらず同程度の確率で返球ミス(失点)が起こるはずです。図1を見ると、サーバーもレシーバーも4球目以降は失点率が30%程度であまり変化がありません。また、この4球目以降のグラフの形は、一定の確率で返球ミスをするという条件でのシミュレーションと非常に近いことがわかっています(Tamaki & Yoshida, 2020)。これらの結果から、卓球の多くのラリーではサービスの影響はそれほど長くは持続しないだろうと考えられます。サービスが得意な選手を相手にする場合はサービスの影響が小さい局面に持ち込むことが有効だと考えられますが、具体的には「レシーブ時には4球以上ラリーを続けること」が一つの目安になりそうです。

サービスの影響がどの程度持続するかについて、選手や戦型による違いは分析されていません。サービスの得意な選手、苦手な選手、あるいは攻撃型か守備型かによって、サービスがその後の打球に与える影響の大きさが異なる可能性があります。この点については、今後も研究が進められることでしょう。


注1:ちなみに、ロンドンオリンピックの際のデータでは、性別や戦型にかかわらず、サービスをもった時は約55%の確率で得点していました(吉田ら、2014)


【文献】
Tamaki, S., Yoshida, K. (2020) Scoring bias caused by services in table tennis: a statistical analysis. International Journal of Racket Sports Science. 2(2): 29-36.
吉田和人・山田耕司・玉城将・内藤久士・加賀勝(2014)卓球のワールドクラスの試合におけるラリーの特徴:ラリー中の打球回数に着目して.コーチング学研究.28(1):65-74.