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コラム 2021.07.24
【会長インタビュー】社会とダイレクトにつながる「デジタルプロジェクト」

【日本卓球協会】


2021年7月に創立90周年を迎えた「公益財団法人日本卓球協会」(以下、日本卓球協会)は、卓球界のさらなる発展を目指す新事業として「ミッション・ビジョン」を策定し、実行に落とし込むための「アクションプラン」を作成した。その一環である「デジタルプロジェクト」は時代のニーズに応える新事業の柱の一つだ。ビジネスの世界で数々の業績を挙げてきた藤重貞慶会長にプロジェクトの趣旨を聞いた。

 

事業価値を高めるデジタルの最大活用

―ミッション・ビジョンを策定するにあたりインターネット調査を行い、広くヒアリングをされたそうですね。

まずは現状把握が必要ですからね。日本卓球協会の職員や理事、外部の有識者はもちろん、ユニークなのは一般の人たち1万5000人以上にも卓球に関する調査を行い、今、卓球は人々の間でどういうポジショニングにあるのかという原点に立ったことです。それによって我々、日本卓球協会のポジショニングも明確にして、卓球を国民的なスポーツにしていくためにはどういったことが必要なのかを、協会メンバーと徹底的に議論しました。同時に私自身、卓球の歴史に関する本や資料を読み込み、卓球を取り巻く背景を改めて整理しました。過去を学び、人々が卓球にどういうイメージを持っているのかを知った上で、将来の道筋を思い描いたのです。

 

―ヒアリングをされた中で最もインパクトのあった声は何でしたか?

たくさんの意見に触れて改めて感じたのは、卓球というスポーツが瞬時の判断力や戦略性に富み、それを実現するための敏捷性や頑健性、知的レベルなど非常に高度なものを要求されるということです。ただテレビの映像を通じてだと、それら卓球の醍醐味や迫力がいまひとつ伝わりませんし、新聞やWebメディアなどの活字でも一般の人と卓球愛好家の理解には相当な開きがあると感じました。そこで日本卓球協会は4番目のビジョン「社会における事業価値を高める」に「デジタルの最大活用」というアクションプランを据え、これまで以上にわかりやすく卓球の魅力を伝えていくことが必要であるという結論に至りました。

 

―それが新たに始まる「デジタルプロジェクト」ですね。

競技団体もかつてとは違って、スポーツの世界にとどまらず社会と直接つながるようになってきたと思うんですね。社会に対して発信をし、そこに人々の共感や感動が生まれる、そういう時代になってきました。その中で重要なのはデジタルメディアの活用です。パソコンやスマートフォンなどの電子端末から閲覧可能な情報を発信するメディアとして、公式サイトや公式アカウントが日本卓球協会にとって不可欠なコミュニケーション手段になることは必至です。とりわけ公式サイトを中心にデジタル上の「卓球ワールド」を構築していくことが、卓球を国民的スポーツにする一番大事なツールと言えると思います。

 

―日本卓球協会が発信する情報は信頼性も非常に高いですね。

おっしゃる通りです。やはり日本卓球協会の情報は最も信頼性の高い公式な情報となります。

 

デジタル上で構築する卓球ワールド

―デジタルプロジェクトには具体的にどのような展開があるのでしょう?

5つほどありまして、まず1つ目は卓球に関する全ての情報を集約する総本山という位置づけの「公式サイト」、2つ目はプレー映像をお届けする「動画配信サイト」、3つ目が卓球人と全ての人々がつながる「ソーシャルメディア」、4つ目が卓球ワールドの主役である卓球人のためのコミュニティ広場となる「会員サイト」、そして5つ目が指導者の育成や交流、情報交換に役立てる「指導者サイト」です。我々、日本卓球協会はこのデジタルプロジェクトを、ミッション・ビジョンの最優先事項の一つに位置づけ、あらゆる側面から卓球に関わるデジタル上の卓球ワールドを構築していきます。

 

―デジタルプロジェクトのロードマップをお聞かせ下さい。

2021年をデジタル化元年とし、すでに公式サイトリニューアルやSNSの運用をスタートさせ、デジタル化プランの作成、人材採用、運営体制の確立といったデジタル化の整備を進めています。そして2年目の2022年は公式サイトやSNSの本格的な活用を目指し、コンテンツの充実や協会主催大会の速報の運用開始を予定しています。そして3年目の2023年には会員サイトをスタートし、データベースを活用したよりきめ細やかな情報発信と、そこから実際の試合観戦やイベント参加などの体験の最大化につなげて参ります。

 

―組織の中で新しい事業を推し進めていくには何が大事だと思われますか?

1つ目は「オープンである」ということですね。いろいろな人がいろいろな意見を言える組織であることが大事です。2つ目は「コラボレーション」。皆が大きな目標の実現のために協力し合うということです。3つ目は「プロフェッショナリズム」だと思います。それぞれの持ち場、持ち場にプロがいて、アイデアを持ち寄りイノベーションを推進していく、これが非常に大事だと思います。それには外部の人の意見を入れる多様性が必要で、性別や国籍、職種を超えてさまざまな特徴を持った人たちが活発に活躍できる、そういう場所に日本卓球協会をしていくことだと思いますね。

 

(インタビュアー・文=高樹ミナ)