2021年に創立90周年を迎えた日本卓球協会は全国47都道府県に点在する協会および連盟、そして36万人に迫る登録会員(2019年度)によって成り立っています。そこで各協会・連盟の安定的な運営や大会運営、練習環境の整備、若年層の育成、シニア層を含む生涯スポーツの普及まで、長年、卓球振興に貢献してこられた功労者の皆さまをご紹介するとともに、お寄せいただいた100周年につながる提言をお伝えして参ります。
(インタビュアー:高樹ミナ/スポーツライター)
全日本選手権最多出場記録を樹立。夢はマスターズに90歳以上の部
柳原正明さん
北海道卓球連盟 元理事長
2021年4月まで北海道卓球連盟の理事長をしておりました。日本卓球協会創立80周年のときには北海道ブロックから3名の功労者を推薦したこともございます。その自分がまさか10年後、功労者に選ばれるとは思ってもいなかったので、大変びっくりしております。
北海道卓球連盟ではかれこれ30年以上、さまざまな活動をさせていただきました。近年で思い出深いのは2019年6月に札幌で開かれた「LION卓球ジャパンオープン荻村杯」です。本来ならば翌年に東京オリンピックが開催される予定でしたから、その前年なら盛り上がるだろうということで、4、5年前から大会誘致に奔走し、念願叶って迎えた一大イベントでした。あのときは北海道出身の佐藤瞳選手が中国の世界女王・丁寧選手に勝って、地元卓球ファンを大いに沸かせてくれました。また北海道からは丹羽孝希選手が2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロ、そして東京と3大会連続でオリンピックに出場し、北海道卓球連盟でも壮行会を開く開き応援できたことも良い思い出です。
少し時代はさかのぼり、1991年に幕張で開かれた世界選手権千葉大会では女子ナショナルチームのコーチとして参加いたしました。当時の私は、かつて日本リーグにも加盟していた北海道信託銀行で女子卓球部のコーチをしていたのですが、母校の日本大学卓球部の先輩である田中利明さんから、「今度、強化本部長になるから協力してほしい」とコーチを頼まれ、「とんでもない。私など田舎のプレスリーですから」と何遍もお断りしたのですが、どうしてもということでお引き受けしました。
あの世界選手権で一番感動したのは、韓国と北朝鮮の統一コリアチームが優勝したことです。しかし、それ以上に感動したのは当時、国際卓球連盟の会長でいらした荻村伊智朗さんの開会式の挨拶です。全部英語でスピーチされて、「この人はなんてすごいんだ」とその偉大さに改めて触れました。荻村さんも日本大学卓球部の先輩ですから、後輩として誇らしく思いました。
日大時代は1年生のときに初めて全日本選手権に出場し、それから通算30回、全日本選手権に出場させていただきました。未だにこれが最多出場記録ということで、全日本チャンピオンの齊藤清さんと肩を並べております。実は1989年に北海道で国民体育大会「はまなす国体」があった関係で全日本選手権に出られない年がありました。当時の国体の出場条件に「大会の2年前から全日本選手権などの全国大会に出場してはいけない」という条項があったのです。それがなければ全日本選手権出場記録は32回になっていたかもしれない、などと幻の最多記録を想像したりもします。
北海道ブロックは何しろエリアが広いものですから、まとめるのにご苦労もあるでしょうとよく言っていただきます。ですが私一人ではなく、連盟の皆さんと力を合わせて仕事をしましたから、今思えば大した苦労はなかったように思います。皆、卓球仲間。団結力があるのです。
2020年6月には平成30年から2期4年務めた日本卓球協会の常務理事の役目も終え悔いはありません。ただ一つだけやり残したとすれば、全日本選手権マスターズの部に90歳以上の部を作れなかったとでしょうか。現在、85歳の部が大変盛況ですので、90歳以上の部ができれば喜ぶ方は大勢いらっしゃると思います。賛同して下さる方がいて実現してもらえたら……。それが今の私の願いです。