公益財団法人
日本卓球協会

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コラム 2021.07.25
【会長インタビュー】創立90周年から100周年へ。今後10年で目指すこと

90周年記念ロゴ【日本卓球協会】


2021年7月に創立90周年を迎えた「公益財団法人日本卓球協会」(以下、日本卓球協会)は10年後に迎える100周年も見据えた新事業「ミッション・ビジョン」と「アクションプラン」に沿って、卓球界のさらなる発展を目指していく。長きにわたり人々の快適な暮らしを支えてきたライオン株式会社会長であり、4期にわたり協会運営をけん引する藤重貞慶会長に今後10年の展望を聞いた。

卓球には国民的スポーツになる要素がある

―これから10年を見据え、卓球の将来性をどのように捉えていますか?

卓球というのは非常に魅力的なスポーツだと思います。基本的にはいつでも、どこでもできる手軽なスポーツですし、3歳くらいから90歳くらいまで幅広い年代がプレー出来るという、まさに国民的なスポーツになる要素を持っています。時代にもマッチしていると言えるでしょう。それと同時に社会の調和、世界の平和にも貢献できると確信しています。そのことは歴史を見ても明らかで、例えば1971年の「ピンポン外交」は当時、敵対関係にあった中国(中華人民共和国)とアメリカに国交をもたらすきっかけとなりました。その舞台が世界選手権名古屋大会だったことはよく知られています。

 

―2021年は、ちょうど「ピンポン外交50周年」でした。

そうですね。あるいは1991年の世界選手権千葉大会で韓国と北朝鮮の南北統一チーム「コリア」が出来た。これもピンポン外交の流れを汲む重要な出来事です。さらに1994年に東京で開かれた第2回地球ユース卓球大会では、紛争を続けるイスラエルとパレスチナの選手の参加を実現し、両国の選手がともに選手宣誓をするという光景が世界中に伝えられました。卓球にはスポーツを通じた国と国、人と人の調和を実現してきた、世界の平和に貢献してきたという歴史と自負があります。これからも微力ながら卓球を通じた世界平和、あるいは社会の調和に貢献していきたい。その願いが日本卓球協会の掲げる「人々の心をつなげ社会の調和を目指す」というミッションにも込められています。

 

―天災や新型ウイルスのパンデミックなど、この先10年も不測の事態が起こらないとは限りません。そうした環境変化に対応するために必要なこととは何だとお考えでしょう?

これからの世の中には3つの潮流があると思うんですね。1つはインタビューの冒頭にも申し上げた「Well being lifeの追求」。物の豊かさだけでなく、むしろ心の豊かさとか感性の豊かさを求める時代です。2番目は「持続可能な社会の実現」。今まで人類は資源をあまりにも消費し過ぎて地球温暖化を招き、世界中のあちらこちらで自然災害が頻発しています。そうではない持続可能な成長を続ける循環型社会になっていきましょうと。3番目は「頑健な社会の実現」。レジリエンスとも言われ最近のキーワードになっていますが、自然災害に強い社会、サイバー攻撃に強い社会など、さまざまな環境変化に対して“しなやかに”対応できる社会になることが非常に大事だと考えます。

「卓球の聖地」を日本に作りたい

―レジリエンスの観点で言えば、最近は選手の心の問題にも焦点が当てられていますね。

メンタルの強靭さというのは、すごく大事ですね。例えるならば竹のようにしなって、折れずにまた元に戻る。この強靭さがレジリエンスで、多くのトップアスリートたちが持ち合わせているものです。人間の限界を超えていくたくましい選手たちの姿は感動や共感を呼びます。

 

―会長ご自身、卓球が今以上に人々の感動や驚きを呼ぶには、「もっとこういう風に見えたらいいのに」とか「ここをもっと知りたいな」とお感じになることはありますか?

卓球というのはものすごく展開が速いし、ボールの変化が多様ですね。ラリーは時速97kmぐらいでボールが行ったり来たりするといいますし、ボールの平均回転数は1秒間に137回転といいます。一説によれば野球のカーブの約4倍の回転スピードに匹敵するとか。それを選手同士が読み合いながらボールを打ち合う、その応酬の醍醐味をリアルにデジタル上で可視化できれば、もっと面白いスポーツとしてファンが増えるのではないでしょうか。

 

―確かに卓球経験者でないと、わからない、見えないという部分が多々ありますね。

ボールに対するラケットの当て方、角度、スピードなどによって千変万化のボールが生まれるわけで、それを読みながら瞬時に対応するというね。かつての名選手で国際卓球連盟の会長も務めた荻村伊智朗さんが卓球は「100m走をしながらチェスをするようなスポーツ」と評されましたけれども、まさにその通りで頭を使い、体を敏捷に使うという本当に高度なスポーツだと思います。そこが十分に伝わりきれていない歯痒さがあります。

 

―その部分にデジタルプロジェクトで応えていくということですね。創立90周年から100周年に向けて、今後10年間で実現したいことはありますか?

「卓球の聖地」のような特別な場所を作りたいなと思っています。例えばテニスには全英オープンの舞台となるウィンブルドンがあって、そこで試合ができるというのは全世界のテニスプレイヤーの憧れなわけです。ゴルフにもマスターズが行われるオーガスタや、全英オープンが行われるセント・アンドリュースがありますよね。それと同じように卓球における聖地を日本に作りたい。世界の卓球選手たちにとって、そこで戦うことが超一流の証(あかし)となる卓球の殿堂を作りたいですね。そしてもう一つは日本卓球協会の会員登録者数を現在の36万人超から50万人、100万人に増やし、いずれは1000万人以上の競技人口を持つ国民的スポーツに押し上げたいと思っています。

 

(インタビュアー・文=高樹ミナ)

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