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日本代表 2021.11.25
【特別連載】女子日本代表・渡辺武弘新監督インタビュー パリオリンピックまでに世界選手権団体で金メダルを

五輪報告会で抱負を語る渡辺武弘新監督【JTTA】


東京オリンピックを終えた日本卓球協会では、2021年9月末日の任期満了に伴い女子日本代表監督を退任した馬場美香氏に代わり、渡辺武弘氏が新監督に就任した。
 
馬場前監督のもとでナショナルチームのヘッドコーチを務めてきた経験を生かし、2024年パリオリンピックを目指す渡辺監督。新たな体制で向かう2024年パリオリンピックまでの強化方針と11月23日に開幕した世界選手権ヒューストン大会の展望を聞いた。
※世界卓球開幕前にインタビューを実施

ヘッドコーチとして馬場前監督を支えてきた4年間

―女子ナショナルチームのヘッドコーチに就任されたのは2017年4月でしたが、どんな役割を担って来られたのでしょう?

私は馬場さんのサポート役で、彼女が監督として力を発揮できるよう、いろいろなお話を伺いながら心身の負担を軽くするお手伝いをしました。人間、喋ると気持ちが少し楽になるところがありますからね。馬場さんとは3歳違いで年が近く、現役時代は一緒に選手をやっていた時期もあったので、馬場さんが監督になられるときに「お手伝いしてもらえませんか?」と依頼されました。

―母国でのオリンピック開催ということで、想像を絶する重圧がおありだったかと思います。

馬場さんはそうですね。傍から見ても相当なプレッシャーを抱えておられると感じました。そうした中で伊藤美誠(スターツ)選手と水谷隼(木下グループ)選手が混合ダブルスで金メダルを獲得してくれて、伊藤選手はシングルスでも銅メダル。また伊藤選手と石川佳純(全農)選手、平野美宇(日本生命)選手の女子団体が銀メダルを取ってくれて本当に良かったです。オリンピックの金メダルは日本卓球界の悲願でしたから私も興奮して、その晩はなかなか寝つけませんでした。

―中国ペア(許昕/劉詩雯)を破って金メダルというのも大きな価値がありましたね。

おっしゃる通りです。そういう意味では女子団体も金メダルを目指しましたが中国に及ばず、「最低でも銀メダル」という目標ラインには達したという感じでした。

―監督就任後は世界選手権ヒューストン大会(11月23〜29日)を控え、さっそく大仕事が始まりました。現在はどんな状況ですか?

10月14日に各選手の所属母体に2024年パリオリンピックまでの強化方針をオンラインで説明させていただきました。世界選手権に向かっては11月1日からナショナルチームの合宿に入り、日本を16日に出発して、ヒューストン到着後もまた現地で合宿をして大会本番に臨みます。

女子ナショナルチームに欠かせない「母体」との連携

―日本の女子選手の戦力をどうご覧になっていますか?

世界ランクを見ても、選手それぞれの意識にしても、昔じゃちょっと考えられないくらいハイレベルだと感じています。特にナショナルチームの選手たちは国際大会の経験が豊富で、大舞台でも全く物怖じせず力を発揮します。本当にプロフェッショナルです。所属母体のバックアップ体制も素晴らしく、選手は日頃から各々の拠点でいい練習、いいトレーニングができています。

―母体という仕組みは特に女子選手に浸透しています。ナショナルチーム全体の強化を考えたとき、各母体とどんな連携が必要になってくるでしょうか?

馬場さんも心がけておられたことですけど、選手の疲労度合いや個々のスケジュールを考慮し、ナショナルチームの合宿が極力負担にならないよう臨機応変な対応が必要です。今の選手たちは試合と練習のほかにファンサービスやスポンサー関連のイベント、メディア対応などもあって忙しいですから。それに卓球は個人競技なので、個々が強くなり自分の役割を全うする、つまり試合でしっかり勝ってくれることが重要です。それがチーム全体の強化とチームワークに繋がります。

―では直接選手を指導するような場面は少ないと。

その通りです。365日、選手のプレーを見ているコーチがいますから、私が選手に直接何かを指示するようなことはほぼありません。それよりも私はコーチやトレーナーの皆さんと話し合い、必要なことがあればコーチから選手に伝えてもらいます。そうすることで日頃の練習に加え、ナショナルチームの合宿が良い強化の場だと捉えてもらうのが理想ですね。

―次の2024年パリオリンピックに向けた強化はどのように進めていくのでしょうか?

このコロナ禍でWTT(World Table Tennis。ITTFワールドツアーに代わり2021年から実施されている)など国際大会の開催は相変わらず不透明な部分が多いので、国内での競争が中心になっていきます。日本卓球協会は今年9月に日本代表候補選手選考基準の考え方をすでに発表していて、世界選手権やアジア選手権、アジア競技大会などに加え、新たに設ける「Road to Paris」選考会や全日本選手権、Tリーグのシングルスといった国内大会が代表選考の対象となります。ただ国際大会の機会が減ると選手は世界の中でどのポジションにいるかが見えづらく、自分のプレーが通用するかどうか不安になることもあるかもしれません。
 

 

パリオリンピックまでに世界選手権団体で金メダルを取る

―世界選手権ヒューストン(個人戦)の開幕が11月23日に迫りました。女子代表監督就任後初の世界選手権ですが、金メダルの可能性はいかがでしょう?

ダブルスは前回ブダペスト大会で伊藤/早田ひな(日本生命)ペアが2位でしたから、やはり優勝を狙いたいですね。石川/平野ペアも東京オリンピックの団体戦ですごくいいプレーぶりだったので、日本のダブルスはチャンスがあると思います。ダブルスはお互いを補いながら良いところを出し合って2人でプレーするので、シングルスで勝てなくてもダブルスで勝てるということがありますし、勝った喜びも2倍です。僕は現役時代、ダブルスがすごく好きでした。

―渡辺さんといえばダブルス種目で数々のタイトルを手にされたダブルスの名手ですものね。一方、シングルスのメダル獲得の可能性はどうでしょう?

もちろん最高の成績を目指しますが、全てを懸けて戦った東京オリンピックから間もないので、オリンピックに出場した選手たちの中に「やるぞ!」というエネルギーが蓄えきれているかどうか、そこは難しいところです。私としてはこの世界選手権がパリオリンピックに向かう最初の“スイッチ”になればいいなと考えています。でも彼女たちのことですから、大舞台に立てば一気にパワーがみなぎって臨戦態勢に入ることでしょう。

―パリオリンピックは3年後ですが、強化の時間は実質2年程度です。その間のロードマップをお聞かせ下さい。

パリオリンピックまでに世界選手権団体で中国を破り、金メダルを取りたいです。また個人戦でもダブルスで金メダル、シングルスは複数名の選手がベスト4に入ることを目指します。そうすれば団体戦で中国と互角の勝負ができて金メダルがぐっと近づいてくると思います。

(文=高樹ミナ)

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